6月19日は「朗読の日」だそうです。6と10と9だから”ろー、ど、く”、ですね。日本朗読文化協会が2002年に定めたのだそうです。せっかくだからこの日にふさわしい本を朗読したいものです。じゃあ、この「朗読の日」である6月19日に何を読むか?それはもうこれしかない!という一冊があります。それは一体なんでしょう・・・
その本とはズバリ『6月19日の花嫁』!!著者は直木賞作家の乃南アサ(のなみあさ)さんです。文庫本は平成9年2月1日に新潮文庫から出ています。
主人公の池野千尋は、目覚めるとびっくりします。素っ裸で寝ていたのです。しかも全然知らない男、前田一行の部屋で。驚くのはそれだけじゃありません。自分に関する記憶が無くなっているのです。自分の名前すら思い出せない千尋の頭にたった一つ浮かんでくるのは「6月19日に結婚式を挙げる」という切迫感のみ。そして目覚めたのは6月12日。あと一週間しかない!失った記憶と取り戻すため、ぶしつけで優しくない一行とあちこちと歩き回ります。そしてやっと見つけた披露宴会場で、千尋は驚愕の事実に直面します。
さらにそこで披露宴を挙げるはずの、夫となるはずの相手、一生を共にするはずの伴侶、記憶を失う前にはこのうえなく愛していたはずのその男性をようやく捜し出し、わらにもすがる思いで会ってみると、感動の再開どころか、予想もしない展開となり千尋は大きなショックを受けてしまいます。
このようにして、6月13日、14日、15日・・・と、「6月19日」に近づく中、記憶が蘇れば蘇るほど謎が深まっていくという、全く予想ができないストーリーに、読む人を一気に引き込んでしまうこの『6月19日の花嫁』、果たしてその結末やいかに?もちろんそれは言えません。しかし読み応え十分の力作であるということは断言いたします。『ジューンブライド 6月19日の花嫁』というタイトルで映画化もされていますから、自らが主人公の千尋になった気持ちになって朗読してみるのもいいかもしれません。
また、特に老健施設に勤務し、認知症を有する利用者様と接する機会も少なくない者の一人として、「記憶とは一体何か?」ということを考える機会にもなりました。「忘れること」、そして「思い出すこと」・・・それらがその人の人生にどのような作用、影響を及ぼすのか?ということを、自分の仕事のやりかたを振り返る機会にもなるおすすめの一冊です。当然ながら1年に1日しかない6月19日。読んでみてはいかがでしょうか。